いつまでも口から味わって食事ができるように。私たちにできること。
歯医者さんにいくと
入口の重いドアをあけて、靴を脱いで、一段上がってスリッパに履き替えて……こんなイメージがありませんか?
従来の歯医者は、これらの動作に支障がなく、診療所を訪ねてくれる方のみを対象に医療を行っていました。一方、病院・老人ホーム・特別養護老人ホームといった施設は、無歯科医村と呼ばれ置き去りに。
そういう状況の中で、とにかく私たちにできる事から行動しようとスタートしたのが、当院の訪問診療です。
いつまでも口から味わって食事ができるように。私たちにできること。
歯医者さんにいくと
入口の重いドアをあけて、靴を脱いで、一段上がってスリッパに履き替えて……こんなイメージがありませんか?
従来の歯医者は、これらの動作に支障がなく、診療所を訪ねてくれる方のみを対象に医療を行っていました。一方、病院・老人ホーム・特別養護老人ホームといった施設は、無歯科医村と呼ばれ置き去りに。
そういう状況の中で、とにかく私たちにできる事から行動しようとスタートしたのが、当院の訪問診療です。
口腔ケア = 虫歯や歯周病の治療
ではありません。
(もちろん、治療も大事です)
他の治療や身の周りのことで、お口のケアまでは…と思われることも多いようです。
たとえば透析後で大変お疲れのときならば、なおさらでしょう。
それでも訪問施設では虫歯の治療よりも、継続的なお口のケアが求められています。
それはなぜでしょうか?
ですが高齢になると、それまであたりまえにやっていたこと、たとえば歯についた食べカスを舌でとるといったことが、筋肉が弱っていて自由にできないことがあります。
食物や唾液を飲みきることができず口の中や食道に付着していたり、異物が気管内に間違って入っても、せきや痰として排出できない、そういった方がたくさんおいでになります。
困ったことに、口は病気(細菌)にとっても入口なのです。
特に免疫力が低下している年配の方や、全身疾患をもっている方には、感染症の危険が高くなります。
お口の中が乾燥し、唾液が洗い流してくれるはずの汚れがたまりやすくなっていたり、粘膜の血流が悪いため細菌に対する抵抗力が弱くなっています。
そして、つながっているのは消化器だけではありません。そう、肺炎の可能性も。
できるかぎり雑菌の進入を防いで、歯周病や虫歯を抑制し、感染症の危険から遠ざけること、少しでも快適に過ごし、「口から味わって食事を続ける」機能の維持に取り組むことにほかなりません。
訪問診療は2002年の夏にスタートし、リハビリのための老人保険施設への訪問からはじめ、今日まで続けて参りました。
その中で学んだことは、施設やそれぞれの患者さんによって容態が全く違い、同じ手法は通用しないということです。
チームのメンバーがアイデアを出し合い、各専門、施設スタッフとの連携によって診療を続けています。
訪問チームは、歯科医師、歯科衛生士、訪問コーディネーター(相談役)で構成されています。
また、重要なのが施設スタッフとの協力関係。
言語聴覚師、作業療法士、理学療法士、看護師、介護士、栄養士、リハビリ科のスタッフ…。
それぞれの取り組みや、現場で何を求められているかを知るために、意見交換やセミナーも行っています。
治療前は、アシスタントと会話することでリラックスし、自然に口を動かすことで準備に入っていただきます。
チームメンバーは、何気ない会話や食事、診療中の様子に注意することで、患者様の状態を把握します。
たとえば…
義歯の作製や調整 | 歯や歯周病の治療 | ブラッシング |
歯周ポケットの洗浄 | 舌や頬の洗浄 | 義歯の洗浄 |
顔のマッサージ、 粘膜マッサージ |
表情筋、咀嚼筋の 賦活運動(嚥下体操など) |
患者様の状態により、スケーリング、ルートプレーニングなどの処置 |
施設やご家族が口腔ケアを行う場合の、アドバイスを致します。
といっても、ご家族の日々の取り組みから、私たちが学んだこともたくさんあるのですけれど。
歯科医院の連携による継続的なケアを
全国に歯科医院は6万件あります。この数は、コンビニエンスストアの倍!
これだけあるのに、施設を退所された方が最寄の歯科で引き続き口腔ケアを受けることができないのは、とても残念なことです。
それでも、当院の訪問チームとの連携を通して、施設自身が口腔ケアに関心をもち、業務の一環として取り組むようになるといったうれしい変化も起きています。
当院では6万件の中の1歯科医院ではありますが、訪問診療を続け、さまざまな施設とコミュニケーションをとり続けることで、口腔ケアに対する意識の向上と、多くの方が継続してケアを受けることができる環境を目指しています。